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空き地の向こう

空き地の向こう

片づけ終えて周辺を手入れしていると持ち主が訪ねてきて「見てみるか」と蔵の内部を見せてくれた。リノベーション中の建物は住む予定はなく歳を重ねた未来を思い浮かべるととにかく小さい空間でいい。なので建物の向かいの蔵をと内部を片づけていたが一階の奥が沈みかけていて柱が抜けかけていることに気づいてしまい、住居難民になってしまうなと解体をしようとしていた矢先のことだった。小さな空き地を挟んで向こう側の蔵。

「ここに住みたいです」

無意識にそう伝えている自分がいた。基礎はしっかりと作り替えられていて内部は現在リノベーションしている建物より状態がいい。外壁は崩してやり直すかとか考えていたが、通り過ぎた地域の人から「このまま直せる部分だけ直して崩れた部分は窓にして挟み込めばいい、冬にも夏にもいい」と意見を頂戴し、そこからイメージしていた。この場所からならあの大きな建物も見渡せる。前には菜園ができる程度の小さな空き地もある。

目的と違う方向に進んでいることに立ち止まって考えていたが、試行錯誤しつつ進んでみるかとやや踏ん切りがついた。待って下さっている人もいるわけだし体力の続く限りやれるだけやってみよう。しかし丁度よいサイズ感だなあ。聞いていると登記のあれこれがすこし面倒らしいけれど定期的に手入れしながらとりあえずは今の場所をざっくり形作ってしまおう。流れ流され時折は抗ってみたりのたおやかな夏。

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